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「お母さん、今日は私の大切な人を連れてきたよ」 私は今こなたと二人で、かなたさんの墓前にいる 「彼方に告げる思い」 事の発端は、夏休みのある朝のこと。 こなたが突然、家に来ないかと誘ってきた。 当然断る理由も無く、いつも通りにOKの返事。 ちなみに、つかさはまだ夢の中。まあ、たまには二人きりでもいいわよね? その時までは普通にこなたの家で遊ぶのだろうと思っていたが、 家に着くなり開口一番、こなたはこう言った。 「一緒にお母さんのお墓参り行かない?」 見ると、こなたは既に外出する準備が整っている。 そうじろうさんも慌しそうに準備を進めていた。 「お父さん、遅いよ~。もう、かがみ来ちゃったじゃない」 「おお、悪い悪い! もうちょっと待っててくれ!」 「全く~……まあ、お父さんが準備できるまで 少し家の中でくつろいでてよ」 そう言われ、私はこなたの部屋に通された。 「こなた、これは一体どういうことなのよ……?」 「え? だから、かがみにもお墓参りに来て欲しいな、って」 「でも……その、折角家族だけになれる機会なのに、 私がいたら迷惑じゃ……」 「そんなことないよ。それに……」 「……?」 「私とかがみのこと、お母さんにきちんと報告したいから」 こちらを見つめながら、そう言い切るこなた。 こなたと恋人という関係になって既に数ヶ月。 確かにこのような機会は今まで無かった。 「……そうね。そういうことなら、私も一緒に行くわ」 「おーい、準備できたぞ~!」 廊下からそうじろうさんの声が響く。 「決まりだね。それじゃ行こっか!」 家の外では、そうじろうさんが車に乗ってスタンバイしていた。 「おはよう、かがみちゃん。暑い中、わざわざ済まないね~」 「いえ、こちらこそ急にすみません」 「急にって、こなたから何も聞いてなかったのかい?」 「いやー、かがみを驚かせようと思ってね~」 「まったく、毎度毎度こなたには驚かされるわよ……。 そういえば、ゆたかちゃんは?」 「ゆーちゃんは、ちょっと早めに実家に帰省中だよ。 だから今回は私達だけ」 「よし、それじゃ出発するか!」 およそ20分程で私達は町外れの霊園に到着。 こなた達の後に着き従うように進み、 やがて一つの墓の元に辿り着いた。 一通りお参りを済ませた後、こなたがそうじろうさんに切り出した。 「しばらく、かがみと二人だけになりたいんだけど」 「そうか。それじゃ、俺は10分後くらいに戻ってくるな」 そう言って、そうじろうさんは霊園の休憩所へと歩いて行った。 「さてと……お母さん、今日は私の大切な人を連れてきたよ」 こなたが語りかけるように話を続ける。 「私の嫁のかがみ。いや、夫かな?」 「おいおい、身も蓋も無い紹介だな……」 「とにかく、私の大事なパートナー。それも、一生モノのね。 今日はそのことを、二人で報告に来たんだ。 ……私達のこと、これからもずっと見守っててね?」 こなたが話し終わった所で、私も続く。 「改めて、柊かがみです。 その、こなたの……恋人、です……」 「恋人宣言に照れるかがみん萌え♪」 「恥ずかしい茶々入れるなっての! ……コホン。 前の結婚式の時もお願いしましたけど、 どうか私達のことずっと見守っていてください。 二人で精一杯頑張っていこうと思ってます」 一通り語り終えた私達は、再び目を閉じて墓に向かい合掌した。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(*´꒳`*)b -- 名無しさん (2023-01-03 20 46 48)
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「ねぇ?かがみ?」 こなたの声が、闇の中から響く。 その声自体はいつもと同じ調子だが、その中に少し緊張が混じっているのが私にもわかる。 「なによ?」 当然ながら、私の声にも隠しきれない不安があって…… 「私達、いつ出られるカナ?」 返事の代わりに、私は本日何度目かわからないため息を吐いた。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 事の発端は、学校の帰りの寄り道。 いつものように4人でお店を冷やかした後のこと……… ブーッっと響くブザーと、それに伴い向けられる視線。 いたたまれなくなり、私は一歩下がる。 何のことはない、エレベーターの最大積載重量を越えたためにブザーがなっただけだ。 断じて私が重い訳ではなく、ただタイミングが悪かっただけだ。 ………断じて私が重い訳ではない。 「あんた達は先に降りてて良いわよ」 「お姉ちゃん…」 「かがみさん…」 「………………」 予想通り降りようとするこなた達を制して、下で待っててね、と扉が閉まるのを見送る。 その時、蒼い風が扉の隙間を駆け抜けた。 唖然とする私をよそに、こなたは閉まってゆくエレベーターに向かって手を振っている。 「ばっ……何やってんのよあんた!危ないでしょうが!!」 「いや~かがみが寂しがってると思ってネ!」 体が動いちゃった♪とおどけるこなたにため息を一つ。 つかさ達の乗ったエレベーターが下へと動き出したのを確認してから、私は下のボタンを押した。 「あまり心配をかけないでよね?」 「私がタイミングを誤ると思ったのかね?かがみ」 いつものように茶化しに入るこなた。 でも今回は一歩間違えたら怪我をしていた可能性もあるわけで……… 「こなた、これは真面目な話」 「………うん、でも!」 「わかってる、私のために来てくれたんでしょ?」 ありがとね、こなた そう言ってこなたの頭の上に手を置く。 こなたは私を見上げながら一瞬呆けた後… 「デレた!かがみがデレた!」 雰囲気読みなさいよ、もう……… 「うるさい!あぁ…もう、エレベーター上がって来るわよ!」 丁度良いタイミングにエレベーターが到着して、私達はそれに乗り込んだ。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 私とこなたがそういう関係に……いわゆる恋人同士になったのは約半年前。 その時の話は……うん、まぁ私とこなただけの秘密だ。 一つだけ言わせてもらうと、その時のこなたは反則なまでに可愛かったとだけ言っておこう。 こなたもエレベーターに乗り込んだのを確認し、外を覗き見る。 どうやらこの階から乗り込むのは私達だけみたいだ。 その事を確認してから、つかさ達が待っているであろう1Fのボタンを押す。 ゆっくりと扉が閉まり、目的地へと向かい動き出す………はずだった。 「え?」 「お?」 3Fを過ぎた辺りで異常は起きた。 ガタンと、音と共に真っ暗になるエレベーターの中。 私もこなたもただ唖然とするしかなかった。 「止まった……わね」 「止まってるね」 こなたの声が横から聞こえるだけで、顔は見えない。 何で、何が、どうなって………頭の中で疑問だけが飛び回る。 「とりあえず、緊急事態には押してくださいってボタンがあったはずだから、探してみよ?」 混乱してる頭に届いた声はこなたのもので、こうした不測の事態にも関わらず、こなたはまるで別人のように冷静だった。 「こなた…やけに冷静ね」 「ふっふっふ、このパターンはすでにアニメで学習済みなのだよ」 「アニメかよ!」 前言撤回、やっぱりこなたはこなただ。 とりあえずボタンを探すために携帯電話のライト点け、それだけを頼りに階層ボタン周辺を見回す。 案の定、階層ボタンの上の方に目標を発見した。 「これを押せば外と連絡をとれるはずだよ」 言われるがままにボタンを押すが、待てど待てど状況が変わる気配はない。 「何も起きないわよ?」 「かがみ、ちょっとどいて?」 こなたに促されて携帯を渡し、一歩さがる。 入れ替わるようにこなたが一歩前に出てボタンを押す。 ………………何も起きない。 ふぅ…とこなたがため息を吐いた。 そして……… 「だだだだだだだだ!」 「止めんか!」 ボタンを連打し始めたこなたの頭を叩く。 「壊れてるのカナ?」 「緊急時に使えなかったら意味無いだろ……」 そだね~と相槌を打ちながらこなたが携帯を閉じる。 辺りが再び闇に包まれる。 こうして感じてみると、ライトの小さな灯りだけでも雰囲気が大分違うのが良くわかる。 しかしここでライトを点けてと言うのは、私が怖がっているのを認めるようでなんだか悔しくて、私は口を閉ざした。 「む~そうだ!かがみのその凶暴さで、このドアを……」 「開けられるか!それに私は凶暴じゃないわよ!」 反射的にツッコミを入れる。 本気で言ってないのはわかっているが、一応釘を刺しておく。 案の定、こなたは知ってるよ―と答えた。 顔は見えないが、きっといつもの猫口顔でニマニマしているのだろう。 「で、かがみは落ち着いた?」 「え?」 こなたの言葉の意味が一瞬わからなかったが……… そう言えば先程までの動揺が嘘のように落ち着いている自分に気がつく。 「みゆきさん亡き今、頼れるのはかがみだけなのだよ!」 「ちょっと待て、まずみゆきは死んでないし、それにつかさはどうした!?」 「うぉ!?恐ろしく的確なツッコミ!さすがかがみ!」 うん、いつもの私だ。 私1人じゃ確実にこんなに冷静になれなかっただろう。 だから……… 「………ありがと」 暗闇の中で小さく掠れそうに呟かれたお礼。 それがこなたに届いたのかは私にはわからないが、こなたが小さく笑った、そんな気がした。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「さて、これからどうしよっか?」 「とりあえずみゆき達に連絡しましょ?」 だから、携帯貸して? とこなたに催促するが、こなたが動く気配はしない。 「こなた?」 「………何で私がボタン探す時しかライト点けなかったか判る?」 そう言えば、さっきからずっと暗闇の中で会話をしている。 てっきりこなたが私を怖がらせようとしているのだと思ったのだが…… もし、その行為に意味があったのならそれは…… 「こなた、その‥まさかとは思うけど………」 「うん、そのまさか」 こなたが私の携帯を開く。 この空間唯一の光と共に目に飛び込んで来たのは、残量1の電池表示と圏外の二文字。 どうやら昨日こなたと電話した後で充電を忘れたらしい。 「電波の方は増えたり減ったりしてるから、とりあえず電池切れだけには気をつけてね」 「………あんたの携帯は!?」 「…………」 「忘れたのか?」 無言の肯定。 そういやコイツは携帯をあまり持ち歩かない人間だった。 私はこなたに直接手渡された携帯ですぐさまみゆきにメールを打つ。 暫く携帯電話を動かして、電波が入った瞬間に、すかさず送信ボタンを押す。 無事に送れたことを確認してから携帯電話をポケットにしまい、………あまり誉められたことではないが床に座り込む。 気配からすると、どうやら隣でこなたも座ったようだ。 「そういえばかがみさ……」 「何よ……」 それから暫くは雑談が続いた。 お互いにいつも以上にお喋りなのは、きっと不安を誤魔化したいだけなのだろう。 しかし、ふとした拍子に会話が途切れ数分。 冒頭の会話に戻る。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「私達、いつ出られるカナ?」 ため息を吐きつつ考える。 みゆきには先程メールを送ったので、みゆきはこの事態を把握している。 みゆきのことだからきっと助けも呼んでくれていることだろう。 それに……考えたくはないがもしメールが届いてなくても、自力で外に出れない以上はどちらにしろ……… 「自力で出られない以上助けを待つしかないのよね」 そう、待つしかない。 でも今の私なら大丈夫。 もし、これが1人だったら私の心は淋しさや不安で押し潰されていたと思う。 けれど、私は今1人じゃない。 「ねぇかがみ、そっちに行っても良い?」 「良いわよ」 手探りでこちらに来てるのだろう。 足に当たったこなたの手を私の手で導く。 暫くの試行錯誤の後、こなたは私に寄りかかるように座り込んだ。 私はそれを後ろから抱き締めるようにこなたの前で手を組む。 「本当………あんたがいてくれて良かったわ」 「かがみ?」 組んだ手に力を込める。 「こんな状況で1人ぼっちだったら、正直きつかったわ」 「今は私と2人ぼっちだからね~」 「………うん」 ニヒヒと笑うこなたをさらに強く抱き締めると、こなたから笑い声が消えた。 かわりにこなたの体温が少しだけ上がった気がした。 「こなた………暖かい」 「………」 返事の代わりに私の腕をギュッと握るこなた。 私は体制はそのままに、抱き締めている腕をほどいて手を絡めるように繋ぎ直す。 こなたは幸せそうに笑った。 そんなこなたがとても愛しく思える。 そんな感慨に耽っていると、前からあくびのする音が聞こえてきた。 「ねえ……かがみ?」 「何よ?」 「こうして……かがみの温もりを感じてると、何か……とても……安心…す…る」 こなたの声が一気に眠気を帯びていく。 そういやこいつ、今日も朝までネトゲやってたって言ってたっけ…… 「寝ても良いわよ。私が傍にいるから」 「………うん」 抱えているこなたの体から力が抜けた。 最後にこなたは小さく一言呟いたのち暫くすると、すーすーと寝息をたて始めた。 「私もよ、こなた………ありがとう。」 こなたにつられるように襲ってきた睡魔に特に抗おうともせずに、私はゆっくりと目を閉じた。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 私達が下に着いてから既に2時間が経ちました。 いまだにかがみさん達が降りてくる気配はありません。 トラブルの件は既にお店に連絡しましたので、私達に出来る事は待つことだけになってしまいました。 先程かがみさんからメールで「エレベーターが止まって取り残されたから、先に帰ってて良いわよ」とメールを貰いましたが、私もつかささんも、迷わず待つことにしました。 「あっ!ゆきちゃん!動きだしたよ!」 つかささんが指で示す先を見ると、3Fで止まっていた表示が徐々に数を減らしていきます。 後ろに控えているこのデパートの代表さん達の間から安堵のため息が聞こえました。 警察と消防の方々にも同様の雰囲気が流れています。 実は無理を聞いてもらい、私達2人も消防の方々と一緒に、最初にお二人を迎えに行けることになっています。 「あ!着いたよ!」 「ようやくですね」 チーンと音を立てて2時間ぶりに1Fに到着するエレベーター。 ゆっくりと開く扉。 その先には………… 「わぁ」 「まぁ」 かがみさんにもたれ掛かっている泉さん。 それを守るように支えているかがみさん。 2人の手はしっかりと絡めあって、簡単にはほどけない事が一目で判ります。 その状態を見た消防の方々が苦笑いを浮かべながらこちらに向き直りました。 「どうやら寝ているだけみたいだから起こしてあげてくれないかな?」 知らない人に起こされたらビックリしちゃうと思うしね。 そう言って消防の方は少し離れた所に移動しました。 「気を遣われちゃったかな?」 「そうみたいですね」 私とつかささんは顔を見合せて笑いあい、かがみさんと泉さんを起こすべく、2人のもとへ向かうのでした。 ちなみにこの時、つかささんがいつの間にか撮っていた写真で、かがみさんと泉さんが大騒ぎをするのは、また別のお話です。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-18 23 05 18) つかさGJ!写真ください! -- ぷにゃねこ (2013-01-25 17 12 16) 大変だね? -- かがみんラブ (2012-09-18 06 18 18) GJすぎる 作者に言おう ……生まれて来てくれてありがとう これが読めたから俺もう 死んでもいいや笑 -- オレンジの (2009-06-25 02 13 15) パニック大好き -- 名無しさん (2009-05-28 18 54 08) ラブラブですね〜♪ 抱きしめた所の 挿し絵が欲しいですね〜。 -- 無垢無垢 (2009-05-27 21 20 59) 最愛の恋人を気遣うこなたは可愛いですね。 ところでつかささん?その写真、メールにて送ってくれませんか? -- こなかがは正義ッ! (2009-05-27 14 10 05) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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【第14話 壊れた人形】 医者と看護師が駆けつけ、ただちに体温計をとりつける。 ───42度。 こなたは熱湯をかぶったように顔を真っ赤にして、ぐったりとして、視線が合わなくなっている。 医師は瞳孔を確認する。左右の大きさが揃っていないと叫ぶ。 意識がないまま、無菌状態を保つためのビニールテントのついた特殊なストレッチャーに乗せられ、大急ぎで検査室へ。 「脳炎か」 「肺も真っ白だ」 深夜の病院はどよめき、大騒ぎになった。病院中の医者を無制限に集める「ハリーコール」という院内放送が鳴り響く。 緊急施行されたCTスキャンの装置の丸い筒の中で異常な脳波がこなたに痙攣を起こさせる。喉まで差し込んだ酸素チューブが機械にぶつかり、パンパン……と不気味な音を立てつづける。 容態急変を受けてかけつけたかがみ、つかさやそうじろうたち。 そこで見たのは、壊れた空気人形だった。 こなたは喉に穴を開けられ、人工呼吸装置の半透明のパイプがつなげられていた。 装置の蛇腹のポンプがプシュー、プシューという音を立てて動くたびに、機械のように胸を膨らませてはしぼむ。 そこにいるのはもはやこなたではなかった。パイプで連結された人工呼吸装置の一部になっていた。 こなたはもう、ゴム風船の人形だった……。 「すでに瞳孔が開いています。ほぼ脳死状態です」 医師団一同は頭を下げ、暗い顔でためいきをついた。 脳波のグラフは平坦な線が続いていた。 検査画像には、頭蓋骨の中で炎症で腫れて今にも破裂しそうな脳が写っていた。 無菌室では空気中の病原体は殺せても、体内に潜んでいるものまでは殺せない。 そのウイルスが、骨髄で白血球が作られる前で免疫力がゼロなのを見計らい、抗生物質すらかわして、脳に炎症を起こした……。 このウイルスは健康な人でもたいてい持っている非常に弱いウイルスで、赤ちゃんの頃の授乳のときに母親から感染すると医者は説明した。 こなたの目は開いたままだった。澄んだ水のような紫の瞳に、かがみの顔が映っていた。 だが、もうその瞳は、かがみの存在を認識することはない。 たくさんの思い出も、ヲタな話題も、コミケも、つかさに隠れてキスをしたことも、宿題を見せてくれと頼んだことも、アニメイトで特典に喜んだことも ……そして病気になったことも、こなたの脳細胞から消え去ろうとしている。 泣いているつかさを抱きしめながら (……どうしても、連れて行くつもりね) かがみは天井の虚空を見つめて、心の中でつぶやいた。 翌日、滅多に出ない無菌室への入室許可が出た。 マスクとガウンをかぶり、面会者一人ずつ順番に入って、少しだけなら直接こなたに触れてもいいらしい。 そしてそれは、それほど時間が迫っているということを示していた。 かがみの番がきた。 かがみはゆっくりと静かに無菌室へ入る。ベッドの傍らに用意された椅子に座った。 「ねえ、こなた」 かがみはシーツ越しにこなたの体に手を当て、呼びかける。シーツは前に入ったそうじろうやゆい姉さんたちの涙でグッショリぬれている。 プシューッ、という人工呼吸装置の呼吸音が返事のように返ってきた。 「私達が、最初に出会った頃のこと覚えてる?」 ……プシューッ 「たしか、つかさの紹介だったわよね」かがみは懐かしそうな目になる。 ……プシューッ 「外人さんを不審者って……まったくどんな奴かと思ってた」 ……プシューッ 「私と出会う前のあんたって、本当は、どんなんだったの?ねえ、きっと、私がまだ知らないことががたくさんあったんだろうね」 ……プシューッ 「ねえ、神様は私に、あんたの18年のうちの最後のほうを少しだけくれたんだね」 ……プシューッ 「あんたのお母さんには最初のほうをくれたんだね。ね。これからの時間は、またお母さんのものみたいね」 ……プシューッ 「これから先は、また私が知らない時間になるのね。同じ運命になるって言ったけど、どうやらそれはちょっと思い違いみたいね」 ……プシューッ 「ね。こなた。無菌室へ入る前の約束をしていい? 今は、まだ、私にくれた時間だからいいよね?」 ……プシューッ こなたは気管に直接人工呼吸装置の管を繋がれており、顔の上には何もなかった。 騒がしい胸元にくらべ、唇は静寂の中にあった。 かがみは立ち上がり、天井の虚空を見あげた。 そしてこなたの顔の上に覆いかぶさり、────約束を果たした。 「脳の腫れが取れてきている……っ!」 医師団は検査画像を見て再び驚いていた。 「脳波も反射も正常に戻りつつある。まったく、研究段階の治療はなにが起こるかわからんなあ……いったいなんの薬剤が功を奏したのやら……」 院内はその話題で持ちきりだった。 無菌室の面会用廊下でつかさも驚いていた。「すごいね……お医者さんって。わたし絶対なる!」 またかがみと抱き合って涙を流していた。今度はうれし涙だった。 「私、絶対、琉球大学医学部に入るよ!」 「絶対に現役で入りなさいよ! さ、家へ帰って今日から毎日徹夜で頑張りなさい。現役生は最後まで伸びるって言うじゃない」 「私絶対イリオモテヤマネコと一緒に人体解剖するよ!」 かがみがこなたと口づけを交わした、そのとき。 神社の奥から探し出した最強の除霊札を小さくたたんだものを口移しでこっそり与えたのだ。 無菌室の片隅にいるはずのかなたに見られないように……。 まるで全部あきらめて、あたかも最後の別れをしているようなセリフをのたまいながら……。 かがみは勝ったと、久しぶりに笑顔になった。 そして同時に嬉しい結果がやってきた。 血液検査の結果、こなたはかがみと同じB型になったそうだ。 「さらに、白血球の数がゼロから500になりました。非常にゆっくりですが、新しい骨髄が働き始めているようです」と医者。 苦しかった日々の成果が見え始めた。 「おお、こなたが、こなたの目が開いた!!うわああああ!!あああああ」 そうじろうは狂ったように叫んだ。 廊下でオイオイ泣いているそうじろうの声を尻目にかがみは無菌室内への専用電話の受話器を上げ、コールを鳴らす。 こなたは仰向けのままゆっくりと手だけ動かして、無表情のまま枕もとの受話器を取って耳に当てる。 「……」 「こーなーた、起きなさい」 かがみは微笑みながら、トントンと窓を叩く。 「……」 「こーなーた、ほら、コミケの開場時間よ」 フフ、ともう一回窓を突っついた。 「……」 こなたはかがみの方にちらりと目を向けた。 「ほら、欲しがってた特典よー」 かがみはアニメイト大宮店で買ってきたクリアファイルの束をブルブル振って見せた。 「ところで、こなた、来期のアニメ何見るの?」 「……誰?」 第15話:別れへ続く コメントフォーム 名前 コメント やめてくれええええええ…! -- 名無しさん (2021-01-17 04 10 07) シリアス好きな自分にはたまらないけどハッピーエンドになると信じてます!!頑張って下さい!! -- 名無しさん (2008-10-03 20 26 51) ちょ・・ちょっとぉぉぉ!!!!! 何!?あの最後の言葉は? 誰?ってιιιι うわぁぁぁ!!!! -- チハヤ (2008-10-03 10 32 23) うわああああああああああ!!!!!? でもこなたん生き返った!!よかった!! -- 名無しさん (2008-10-03 03 25 03) ちょおおおぉぉぉおぉおっっ!!!!! 思いっきり叫んじゃいましたよぉおっ! -- 名無しさん (2008-10-02 23 30 21) 待てっ、逆に考えるんだ! 記憶がないということは、調教し放d(ry -- 名無しさん (2008-10-02 23 03 19) ある意味こなたは必ず帰ってくる!! 信じて続きを待ってます。 -- kk (2008-10-02 19 11 46) こなたああああああああああああああああああああ -- 名無しさん (2008-10-02 03 13 48) いやぁぁああこなたぁぁあ -- 名無しさん (2008-10-02 01 49 44) たのむから~~~~ -- 名無しさん (2008-10-02 01 16 10) いやああああああああああ -- 名無しさん (2008-10-01 23 00 46) うわああああああああああああああああ -- 名無しさん (2008-10-01 22 21 35)
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《邪神 かがみ(060)》 キャラクターカード 使用コスト2/発生コスト2/緑/AP20/DP30 【メイド】 相手のキャラがアプローチに参加した場合、自分の「邪神 かがみ」または【メイド】を持つキャラ1枚を活動状態にする。 [アプローチ/相手] [↴]自分の『ささみさん@がんばらない』のキャラ1枚を活動状態にする。 (ふぁ……。私の幸せお眠りタイムを邪魔した罪は重いのですよ。) ささみさん@がんばらないで登場した緑色・【メイド】を持つ邪神 かがみ。 相手キャラがアプローチした時に邪神 かがみまたは【メイド】キャラ1枚を活動状態に戻す効果、自分の『ささみさん@がんばらない』キャラ1枚を活動状態に戻す使用型テキスト効果を持つ。 2つの活動状態に戻す効果を持ち、対象とタイミングが異なる。 それぞれの効果は独立しているため、1枚で最大2枚のキャラを活動状態にできる。 どちらも相手がアプローチしないと発動できないので注意。 カードイラストは描き下ろし。 関連項目 活動状態 収録 ささみさん@がんばらない 01-060 パラレル 編集
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「ちょっ…こ、こなたぁ…」 「かがみ…もうこんななってるよ…?」 「ばっ、ばかっ!恥ずかしいこと言うなっ!あ、あんたのせいなんだからっ…」 「えへへ…口ではそんなこと言ってるけど体は正直だね?ほらっ?」 「んっ…!だ、ダメぇ…」 「かがみ可愛いよ…大好きだよ。」 「あ…あん、こ、こなたぁっ!わたし…わたしもうっ…」 「なぁに?」 「私もこなた大好きっ!!大好きなのっ!」 「かがみ…」 「もっと…もっと愛してこなたっ!こなたこなたこなたっ」 「こ、こなたぁ~っっっ!!」 ドスンッ! 振動と共に痛みが体に伝わる。暗い…目の前が真っ暗だ。あれ…どうしたんだろ私…? 「お姉ちゃん!大丈夫!?」 「へ…?」 光が差し込む。目の前が急に開けた。そして悟る。私ベッドから転げ落ちたのか…。 「お姉ちゃん平気?」 呼ばれて見上げる。そこには心配そうな顔をしたパジャマ姿のつかさがいた。 「あ…おはようつかさ、大丈夫よ。」 恥ずかしいとこ見られてしまったな…しかも私あんな夢見てて…あ、あんな変な夢…何考えてるのよ私! 「お姉ちゃん、顔真っ赤だよ?熱あるの?」 「んあっ、ち、違うわよ、なんでもないっ。それよりどうしてつかさがここに?」 「え、え~っと…珍しく早く目が覚めちゃって、トイレ行こうと部屋を出たらお姉ちゃんの声が聞こえて~。 そしたらなんかうなされてたみたいだったから。」 「そ、そっか。ごめんねありがと。」 なんたることだ、声まで出ていたなんて…変なこと言ってなかっただろうな…?「じゃあ私下行ってるからね。」 「あ、うん、私もすぐ行くわ。」 パタン… 部屋の扉が閉まる。私は落ちた布団をかたす為起き上がる。ガチャ… 不意に扉が少し開いた。つかさが赤い顔をして隙間から顔を出している。 「あ、あのお姉ちゃん…」 「え、な、何?」 「こなちゃんと…お楽しみでしたね。」 ―ピシッ!― そんな音と共に頭から足元にかけて亀裂が入った気がした。なにも言い返せずただ佇む私がいる。 「えへへ…結婚式には呼んでね。」 そう言ってつかさは再び扉を閉めた。 「…き、聞かれてた…の?」 ジリリリリリリリリリ…… 目覚ましの音が鳴る。もう覚醒しきった私には必要のないものだったが、茫然自失としている私にはそれを遮ることは出来なかった。 ~想いが重なるその前に③~ 「やふ~、かがみん。」 「おっす、こなた。」 時刻は午後1時過ぎ。今日から夏休みが始まった。そして今こなたからの電話をとったところ。 唐突だが、私はこなたが呼ぶ「かがみん」という言葉が大好きだ。こなたしか呼ばない愛称(?)で、なんか特別っていうか そんな感じがして…すごく癒されるんだ。…べ、別にノロケてるわけじゃないからねっ! 「お~い、かがみんどったの?」 「えっ!い、いや~別に…あははは。」「ま~た変な妄想してたんだ~?かがみんはカワユイね~。」 ニヤニヤ♪ 電話を通してそんな擬音語が聞こえた気がした。 「ち、違うわよ!それよりなんの話?」「あぁ~、この前の旅行の話なんだけどさ。明後日大丈夫かな?」 「う、うん、いいわよ。」 「よかった~☆ホントはつかさやみゆきさんも誘うべきなんだろうけどさ、どうしてもかがみんと二人きりになりたくて…」 「えっ…」 珍しくしおらしくこなたが言う。…そっか、明後日は私達の… 「だ、大丈夫よ…」 「えっ…?」 「その…つかさ達も私達のこと分かってくれてるし…それにつかさも明後日からみゆきとどっか行くって言ってたよ。」 「そうなんだ。もしかしてあの二人…思いっきりフラグ立ってたりしてね!」 「またあんたはそんな発想を…とにかくこのことは気にしなくていいからね。」 「ありがとかがみん。それじゃー明後日は10時に駅前集合でよろ~。」 「は~い、分かったわよ。」 ガチャ 電話を切る。明後日はこなたと一泊二日の旅行だ。こなたはこの日の為に旅行に誘ってくれたんだ。そう…明後日は私達の…二週間記念日。 ~ガタンゴトン…ガタンゴトン…~ どんより曇っていた空から光が差し込む。今日はまだ姿を見せていない太陽は徐々にその姿を現わし始めている。窓の向こう側には一面の緑。 そこに生命力逞しく息づく草々は今日初めて受ける太陽の光を喜ぶようにざわざわと揺れている。 更に手前には場違いな一本の青い草。決してピンと背筋を伸ばすことはなく時折左右に揺れ動く。 だが緑の中に栄えるその蒼はとても綺麗で。私はしばし窓の外の景色に心を奪われていた。 「か~がみん!」 青い草の主が呼ぶ。「ん?どうしたこなた?」 「この問題分かる~?何回やっても何回やってもこの問題が解けないのだよ~。」 椅子に深く寄り掛かりながら某携帯型ゲームをしていたこなたが聞いてきた。 「珍しいわね、あんたが詰まるなんて。どれどれ~、貸してごらん?」 「ほら、ここをこうすればできるのよ。」 「お~♪さすがかがみん、私の嫁!」 「だ・れ・が嫁だ!!」 「じゃあ私の夫!」 「そういう問題じゃないわっ!!」 そんないつも通りのボケとツッコミを繰り返しながら電車に揺られること約3時間、私達は目的地へ到着した。 「や~っと着いたわね~。さすがに少し疲れちゃったわ。」腕を上げ長い電車の旅で縮こまった体を思いっきり伸ばす。 「そだね~。だがかがみん、私達の旅はこれからが本番なのだよ!まずはあそこ行くよ。電車での打ち合わせ通りにっ。今日は遊ぶぞぉ~☆」 「はいはい、どこでも付き合ってあげるわよ。」 「んふふふ、かがみんっ♪」 「な、なによ?」 「二人だけの思い出…いっぱい作ろうね。」 ドキンッ!! いつもの猫口ながらいつもと違うしおらしさを見せながら、上目遣いでしかも頬を染めながらこなたは呟いた。 か…か、か、か、カワイすぎる…。 こ、こなたさんいつの間にそんな悩殺ポーズと台詞が出来るようになったんですか?ギャルゲか?ギャルゲなのか? …ってなに私思春期の男子みたいな反応してんのよ! 「かがみぃ?あれ、かがみ?」 こなたが下から覗き込むように話しかける。しかし返事はない、ただのしかばねのようだ。 「ありゃりゃ~、かがみんには刺激が強すぎたかな~。んじゃあちょいと失礼して…」 こなたがつま先をスッとあげ… ムチュ♪ 唇が重なり合う。 お父さん、お母さん、私はもう理性を保つことはできそうにありません。先立つ幸運をお許し下さい。 「こ~な~たぁ~!!!!」 思いっきりこなたに飛び付く。 「うわっ!かがみん落ち着いて…」 「あんたのせいだからね!責任とってもらうわよ~!」 「ちょっ、待っ…うわぁっ!そこ手入れたらダメだって…」「うるさいうるさいうるさ~い!!」 「かがみっ…人!人見てるからっ!か、かがみ~!」 「そんなの関係ねぇ~っ!!」 「ひょ、ひょんな~!うわぁっ!そこダメぇぇ~!!」 アッー!!! なにか素敵なことが始まりそうな、そんな夏休みが始まった。私にとってきっと今までで最高の夏休みになるだろう。 予感じゃない、確信している。だってこなたといるんだから。 どんな時だってコイツと一緒なら最高になるんだ。コイツがいれば私は最高に輝ける。 大好きだよ、こなた。 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-09 17 57 33) どこに行くんでしょうね -- 名無しさん (2010-07-22 08 02 22) 先立つ幸運をお許し下さいwwwワラタwwwwww -- 名無しさん (2010-04-15 19 17 56) もう最高だ!! -- 東トウ (2010-03-29 22 42 08) 妄想で暴走なかがみGJ☆ -- チハヤ (2008-07-22 17 29 43)
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小さな子が泣いている。 その子はとても小さくて、とてもか弱そうで……とても……。 ……そう、こなた……こなたに似てるんだ……。 ……あれ……私……何を……? ……っ!!そうか……私は……こなたを庇って……。 ……こなたは? ――みぃ……。 ……小さな子が何かを言っている。 ――がみぃ……。 「――かがみぃ!!」 ――奇跡から幸福へ―― 「……っ!!」 ……私は……柊かがみ……。 ……ここは……病院? ……確か私は……こなたを庇って……。 ……こなたは!? こなたは無事!? 「……ん……」 気が付くと何やら黒い塊が私の上にのしかかっていて……ってつかさか。 「……おーい、つかさー。起きろー」 つかさは寝ていると予測、私のカンがそう告げている。 さて、どうやって起こそう。 1、揺さ振る 2、叩く 3、落とす ……駄目だ、絶対に起きない。 ……それにしても……こなたは……? 「……んん……お姉……ちゃん……?」 どうやらつかさが目を覚ました様だ。 「……えーと……おはよう……かな……?」 その時つかさが大泣きしながら私に抱き着いて来た。 本当に甘えん坊なんだから……全く……。 「お姉ちゃん……お姉ちゃん……よかった……」 「そう簡単に死なないわよ……ほら、泣き止んで」 それにしても以外と身体が動くわね、何でだ? ……別にいっか。 「心配したんだよ……ずっと目を覚まさないで……」 「ずっと……って……何日ぐらい?」 「3日……かな」 げ……そんなに寝てたのか……。 これじゃ授業に遅れる……今度のテストやばいかも……。 ……そんな事よりもこなただ、こなたは何処に? 「つかさ、こなたは何処?」 「え?こなちゃん?……ちょっと待っててね」 そう言うと病室から出ていってしまうつかさ。 ……3日……こなた……泣いていたのかな……。 もしかしたら自分の事を責め続けていたのかもしれない。 ……こなたは普段ああいう奴でも……。 ……甘えん坊……か。 こなた……会いたい……。 身体は動く、吐き気とかそういう症状もない。 ……行っちゃおうかな……。 でもこなたが何処に居るか知らない。 ……つかさが帰ってくるのを待つしかないか……。 ―――――――――― 「お待たせ~お姉ちゃん」 つかさが戻って来た。 ……こなたは来たのかな? 「つかさ、こなたはどうしたの?」 「それがね……会えないって……」 ……会えない? 「こなちゃん泣いてたよ、お姉ちゃんが怪我したのは自分のせいって責め続けてた」 ……やっぱり……。 「仕方ないわね……こなたは何処に居るの?」 「え……?ど、どうするつもりなの?」 「決まってるでしょ」 こなたが来ないなら……。 「案内してつかさ、私がこなたに会いに行く」 ―――――――――― かがみ……よかった……目を……覚ましたんだ……。 3日……長かったなぁ……。 つかさが言ってた、かがみが私に会いたいって。 ……会えないよ……私のせいだもん……。 私がかがみを傷付けたみたいなんだから……。 こんな罪深い私が……かがみと会うなんて……。 でもかがみと会いたい、会って抱き着いて思い切り泣いて、かがみに……甘えたい……。 ……どうしたらいいのかな……私……。 「どうして自分の事を責め続けてるの?」 もう一つの私の心が問いかけてくる。 「……私の……せいだから……」 「どうして自分のせいだと思うの?」 「……私が……かがみをアキバに……連れていったから……」 「……じゃあ……このままでいいの?」 「……いいわけないよ!!!私だってかがみに会いたい!!今すぐに会いたい!!かがみに会って甘えたい!!だけど……だけど……ひっく……」 「……ホント、アンタって意地っ張りね」 私はその声を聞き顔を上げる。 そこに居たのは……。 「3日ぶりねこなた、元気にしてた?」 「か、かがみ……」 私の大好きな人……かがみだった。 「全く!!何が自分のせいよ?アンタに非なんて全然無いわよ!!私が勝手にこなたを庇っただけ!!」 「……う……っ……」 「いい?こういう時は我慢しないで来るの。非があったとしても会いに来るの……私だって……会いたかったんだから」 「……ひっく……かがみぃ……」 「……おいで、こなた」 かがみのその一言に私は頷き抱き着き……泣いた。 「よしよし……辛かったよね……3日間もほったらかしにして……ごめんね」 「かがみぃ……かがみぃ……!!」 もう何も考えられない、唯一考えられるのはかがみの事だけ。 「好きなだけ泣いていいからね……私が全部……受け止めてあげるから……」 「えぐ……ひっく……」 ……そんな事……言われたら……泣き止むことなんて……出来ないよ……!! ―――――――――― 小さな子供の様に泣くこなたを抱きしめ、頭を撫でる私。 ……なんか母親になった様な気分……。 この小さな身体でどれだけ自分の事を責め続けたんだろう、どれだけ自分で自分を傷付けたのだろう。 ……今のこなたは傷だらけ、私が治すしかない。 ……こなたは……今までこうやって泣いた事……あったのかな……。 もしかしたら初めてなのかもしれない……。 「うぐ……ひっく……えぐ……」 ……不覚にも泣きじゃくるこなたが可愛いと思ってしまった。 ……不謹慎だ私……。 でも……可愛いって所は譲れない。 だって私の……好きな人なんだから。 ―――――――――― 「……落ち着いた?」 「…………うん」 あれから1時間ぐらい経っただろうか、私達は抱き合いながらベッドの上で横になっている。 一人用?でもそんなの関係ねぇ。 「……温かい」 こなたが私の胸に頭を押し付けてくる。 ……可愛い……何て言うか……いつもよりしおらしいこなた……。 どうしようもなく愛おしくなり私はこなたの頭をほお擦りする。 「こなた……これからずっと一緒だからね……」 「……お願いだよ……」 分かってるわよ、そんなに怯えなくて大丈夫。 「だって私は……こなたの嫁でしょ?」 「……嬉しい……」 ……あ、あれ?なんか普通に返された……。 ……今のこなたはオタクなこなたじゃなくて……弱気なこなた? ……今理性が無くなりそうになった……。 でも……こなたの新しい一面が見れてよかったかも。 だって好きな人の事を知っておきたいしね♪ 「……かがみぃ……」 甘えた様な声で呼んでくるこなた、私の脳内にその声を保存した。 「……居る……よね?」 そう言って私の身体に顔を埋めるこなた。 その様子はまるで私が本当にここに居るかどうか確かめてる様で……。 「……当たり前でしょ」 私はここに居るというアピールを兼ねて強く抱きしめる。 ……本当に小さいな……。 だけど……なんか守ってあげたくなる……放っておけない……。 「……良かった……」 「……こなた?」 「……スー……」 ……寝た……のかな。 ……でも……その寝顔はどこか怯えている様な……。 ……全く、夢の中でも怯えなくていいっての。 ……でも……その不安を……失くしてあげたい……。 私は眠っているこなたに……そっと……キスをした。 ……これで少しは……安心出来るかな……。 ……私も寝よう……お休み、私の大好きなこなた。 END- コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-06-05 07 46 13) 鬱end苦手だからホッとした -- 名無しさん (2010-04-02 18 55 16) どんな鬱展開になろうとも 結局はハッピーエンドに、なるのか 少し残念だな -- 名無しさん (2010-03-22 20 20 49) happy・end よっしゃあぁぁぁぁ -- ラグ (2009-02-06 12 53 20) 1話(幸福から絶望へ)を拝見した時はどうなる事かと思いましたが、良かった良かった。 こういう鬱展開でも最後に逆転ハッピーエンド的な作品は大好きです。 -- kk (2009-02-04 22 45 06) 和んだ -- アイスラッガー (2009-02-04 20 21 33) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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「……んむ……」 カーテンの隙間から太陽の光が射し込んできて、私は目を覚ました。 昨日は全然寝付けなかった。 頭の中が、かがみのことでいっぱいだった。 ――他に、好きな人が出来ちゃった……? ううん、そんなことない。 かがみは、言ってくれた。 私だけを好きでいてくれるって。 ――私に飽きちゃった? これもないって思いたい。 一昨日までは今までみたいでいてくれたし……。 考えたくないようなことが浮かんでは、それを必死に振り払った。 このままベッドにいたら、余計気分が重くなるかも……。 そう思った私はベッドから出て、ふとおもむろに時計を見た。 ――――!? 私は自分の目を疑った。 9:30。 つまるところ………。 遅刻じゃん!!! もってけ!(携帯のアラーム)なったっけ!? 近くにある携帯を開いても、画面は真っ暗なまま。 「電池切れてるし……。そう言えば昨日残り1つだったの忘れてた……」 って呑気に言ってる場合じゃなかった!! 携帯を机の上に戻して、すぐに制服に着替える。 「も~、なんでお父さんもゆーちゃんも起こしてくれないかな~……」 そう愚痴った瞬間、脳裏に浮かぶ昨日の会話。 『そうだお姉ちゃん、私明日朝早いんだ。お姉ちゃんにお弁当用意してもらうの悪いから、お昼は買っちゃうね』 『俺も明日は朝から夜まで出なんだ。こなた、大丈夫だと思うけど、朝寝坊するなよ』 そう言えばそんなこと言ってたっけ……。 かがみのことで頭いっぱいで、すっかり聞き流してたよ……。 ゆーちゃん、お父さん、ちゃんと言ってたのに文句言っちゃってごめん~~。 二人に心の中で謝りながら、私は家を飛び出した。 ☆ 「こなちゃん、おはよ~」 「おはよ、つかさ………ふぅ」 三時間目と四時間目の間の休み時間になんとか到着。 久しぶりにかなり走っちゃったなぁ……。 「今日はどうしたの?」 「寝坊しちゃってさ……」 「こなちゃんも寝坊するんだ。ちょっと意外~」 「そりゃするよ。つか………ごほん、何でもない」 『つかさほどじゃないけどネ』 そう言おうとして、やめた。 言葉が相手に、どんな効果をもたらすかわからない。 だから、冗談でもむやみやたらと人を傷つけかねないことは、言わないほうがいい。 ―――私はそれを、昨日学んだ。 「泉さん、おはようございます。欠席かと思いましたよ」 後ろからみゆきさんの声が聞こえて、振り返る。 「おはよう、みゆきさん」 「今日はどうされたのですか?」 ……正直に言えるわけないよね……。 昨日のことだって二人に伝えてないのに……。 もし伝えたら、二人に余計な心配や迷惑かけるに決まってる……。 それはつかさとみゆきさんに悪いしなぁ……。 とりあえずテキトーな言い訳でごまかしとこ……。 「いや~、寝坊しちゃったよ~。昨日遅くまでLv上げに勤しんじゃったから、つい」 「なるほど、泉さんらしいですね」 みゆきさんは柔らかい笑みを浮かべた。 「そう言えば泉さん、昨日――」 キーンコーンカーンコーン――。 みゆきさんの言葉を、チャイムが妨げた。 「チャイム、鳴っちゃいましたね……。また後にお伝えしますね」 そう言ってみゆきさんが席につくとすぐに先生が入ってきた。 ☆ 「ふぅ、なんとか座れた……」 久しぶりの学食。 笑顔で友達と話してる人たちばっかりで、私一人だけ場違いだなぁ……。 なんで私がこんなところに一人でいるのか。 それを説明するために、少し時間を遡る。 「あれ、こなちゃんどこいくの?」 お昼、席をたった私につかさが聞いてきた。 「ごめん、今朝はお弁当作れなかったし、買う暇もなかったから、ちょっと学食行ってくるね」 いつもなら多分チョココロネだったんだけど、買うのすっかり忘れてたからなぁ。 「そうなんだぁ。私のお弁当、半分あげようか?」 「いや、それは悪いよ」 迷惑はかけられない。私が悪いんだし、ちゃんと自分で責任とらないと。 「私は良いよ~?」 うう、つかさめ……。 遊びはここまでだ……!! 次はデカいのを一発お見舞いしてやんよ! 「私、朝も食べてなくてさ~。お昼はちゃんと食べたいんだよね」 これならつかさも言い返せまい! 「そっか~。それなら仕方ないね。気をつけて行ってきてね」 「外に出るわけでもないんだし、大丈夫だよ」 「あっ、そうだったね。つい、いつものくせで~」 「なるほどね~。それじゃお腹もすいたし混むと嫌だから……気をつけていってきま~す」 ―――そして今。 目の前にある醤油ラーメン。 そう言えば、前にかがみが頼んでたっけ……。 つかさもラーメン頼んだら麺がなくなっちゃったって言われて、結局つかさにあげてたなぁ。 かがみってわがままも言わないで、甘えさせてくれる優しさを持ってるよね……。 私のボケにもちゃんと突っ込んでくれるし……ね。 ―――――それに比べて、私は―――――。 好き勝手にボケて、突っ込まれることを期待してる……。 ―――私はわがままだ。 わかってる。そんなこと。 でも――――。 初めてのデート。 不安だった。怖かった。 【恋人】という関係になった今、私はかがみに何がしてあげるんだろう? どうすれば、かがみは楽しんでくれる?喜んでくれる? ――――わからない……。 もし、変なことを言って嫌われてしまったら……。 でも、このまま黙っていてもつまらないと思われちゃうし……。 ――――どうすればいいんだろ……。 ずっと悩んでいた。辛かった。 ―――でも、かがみはたった一言で私の不安を払ってくれた。 『バカ……。変わろうなんて思わなくていいのよ……』 夏の日が落ちた、暗い静かな公園。 ベンチに座ってる私だけしかいない。 そこでかがみは私に言ってくれた。 『私は……今のままのこなたが好き……』 買い物をしたあとに、2人で歩いているときに見つけた場所。 遊具は滑り台とブランコだけ。 そんな、こぢんまりとした公園の片隅にある、小さなベンチの上で。 かがみは、この上ない幸せを私にくれた。 それは、まるで短い物語詩。 それは、幸せを紡いだ譚歌。 ――――そんな、バラッドのような思い出。 なのに…………。 かがみ…………。 涙が零れ落ちる。 周りの知らない笑顔に水を差したくないし、私自身も見られたくない。 だから、私はそれを隠した。 私のことを気に留める人は誰一人いなかった―――。 ☆ 今日も私は独りで帰っていた。 遅刻した授業のプリントを受け取りにいかなきゃいけないから、とつかさには先に帰ってもらった。 みゆきさんは委員会の話し合いがあるみたいで、一緒には帰れないみたいだった。 『待ってようか?』 つかさは言ってくれた。 でも、私は首を横に振った。 『先生いるかわからないし、探すのに時間かかっちゃうかもしれないから』 かがみにもそう伝えて欲しいという旨も伝えた。 進学校である陵桜学園は、欠席した授業の分のプリントなどは自分で受け取りにいかなくちゃいけない。 いつもなら面倒に感じるこの作業も、今日ばかりはありがたかった。 念のため、プリントをもらった後も少し時間を潰して、私は帰路についた。 これなら、かがみに会うこともないはず。 ―――でも、私の心の奥底では違う感情が渦巻いていた。 辛い……。寂しい……。もう嫌だよ……。 でも、わかんないよ……。どうすれば……どうすればかがみとまた一緒にいれるんだろ……。 まだ一緒にいられるのかな……。その方法があるのかな……。 私はきっとかがみに嫌われている。鬱陶しく思われてる。 でも、かがみの口から直接聞きたくない……。 そしたら、【きっと】って言えなくなる。 そうなったら、私はどうなっちゃうかわからない……。 夜の時は必死に壁を作って嫌な考えから、私を護っていた。 でも、壁はもう崩れていた。 それは、あのベルリンの壁よりもあっけなく崩壊していった。 ―――もう私を護ってくれるものはなかった。 ううん、それは最初から間違っていたのかも―-―。 「泉さん」 突然後ろから声をかけられて、びくっとしながら私は振り返った。 「み、みゆきさん………?」 「委員会が終わって帰ろうとしたら、見慣れた後姿を見かけたので」 「そっか……」 そのまま私たちはしばらく黙って歩き続けた。 ふとみゆきさんのほうを盗み見ると、頬に手をあてたり頭を抱えたり首を振ったりと……なんか悩んでる?ようだった。 「あははは」 その姿が可愛くて、悪いと思いながらもつい笑ってしまった。 「あ、あれ、泉さん、どうかされました?」 みゆきさんが慌てたように聞いてくる。 「ご、ごめん、みゆきさんが悩んでる仕草がやけに可愛くて、つい」 「そ、そんな大げさでした……?」 みゆきさんは顔を真っ赤に染めていた。 「いやいや、流石は歩く萌え要素って感じだったねぇ~」 「はうぅ……」 さらに身体まで小さくするみゆきさん。 「そうゆうところとか、余計にね♪」 「は、恥ずかしいです……」 「ごめん、みゆきさん~」 みゆきさんが私よりも小さくなりそうだったので慌てて謝った。 「いえ、いいんです……もう……。……ところで泉さん」 「ん~、何?」 「久しぶりに笑ってくれましたね」 「あ…………そう…………だね」 言われて初めて気づいた。 久しぶり、と言っても実際は昨日の昼前から今日までの48時間にも満たない時間。 でも、私にとっては【久しぶり】という語句が当てはまるくらい、長い時間に感じられた。 「泉さん、その………何か、あったのですか?」 「え?」 みゆきさんは心配そうに、けど真面目に私に問いかける。 「………」 私は何も答えられなかった。 友達……いや、親友が真面目に聞いてるのにウソをつきたくない。 でも、本当のことを言っても心配をかけてしまいかねない。 その二つの板挟みで、私はどっちにも進めないでいた。 多分、みゆきさんも【何か】があったってのは分かってる。 だから黙秘は肯定と同じ。 それでも否定しないのは―――。 「言いたくないのであれば、無理には聞きません……」 「ごめん……」 みゆきさんの顔を見れず、俯く。 「ですが、私に何か出来ることがありましたら、ぜひ仰って下さいね」 「でも……」 「遠慮なさらないで下さい。私の知識がみなさんのお役にたてるなら、これほど嬉しいことはありません」 一見知識の量をひけらかすような言い方だけれども、みゆきさんの言葉には本当に私に協力してあげたい、という気持ちがひしと伝わってきた。 「ありがとう、みゆきさん……」 みゆきさんは天使や女神がいたらこんななんだろうな、というくらい優しく綺麗な笑顔を浮かべて言った。 「泉さんは、一人じゃありませんよ」 「…………」 私は、また何も返せなかった。 もしみゆきさんの意図していることが、私の思っている通りなら―――。 「つかささんがいらっしゃいます。微力ながら、私もいます。そして――」 みゆきさんはさっき以上に優しい、そして柔らかに笑む。 「なにより、かがみさんがいらっしゃるではありませんか」 みゆきさん……。 かがみは、きっと私のそばにいてくれてないよ……。 かがみがいるのは、高い厚い壁の遠い向こう……。 私の手の届かないところだよ……。 でも、そうとはみゆきさんに言えない。 みゆきさんに心配をかけたくない。 そしてそれ以上に、言ったことでかがみに鬱陶しく思われて、もっと嫌われるのを避けたかった。 「……そうだと………いいけどね………」 私はそんな、曖昧な返事をした。 「そうですよ。絶対です」 みゆきさんの笑顔は、言葉は、私には眩しすぎた――。 でも、それなのに―――。 「ありがとう―――」 自然と言葉がこぼれていた。 かがみの本当の気持ちはわからない。 でも、みゆきさんにそう言ってもらえて、私の心の闇が少し晴れるのを感じた―――。 ノゾムハダレガタメへ続く コメントフォーム 名前 コメント ( ̄ v  ̄)b -- 名無しさん (2023-01-07 14 10 33) みゆきさんの優しさに私が泣いた。 しかし、何と言うすれ違い。まさに試練ですね。 続きもwktkです。 -- 6-774 (2008-03-04 23 44 34)
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柊かがみ T-01 「絶望の1日の、はじまり」 それは灰被りをステージへと導く魔法使いか、取り返しのつかない契約を迫る悪魔か、または奴隷戦士の為の調教師か。 西暦2007年11月10日の土曜日が24時間を終え、改装工事による休業日の初日――11月11日の日曜日を丁度迎えた瞬間、 ショッピングビル――ブランシェ(Branche’)の店内に存在する全てのモニターが光を点し、その中に映像を浮かび上がらせた。 状況を飲み込めず困惑したままであったかがみの目の前。 2階までが吹き抜けとなったフードコートの天井近くに設置された巨大モニターも他と変わらず同様で、 それを見上げる彼女をまるで見下ろすかの様にその中に一人の人物の姿が映し出される。 『……――ようこそ、挑戦者達よ』 そういった出だしで話を始めた男に取り立てるような際立った特徴は見られない。 よく見かけるようなスーツ姿の中年男性で、物腰や着ている高価そうなスーツを見るとどこかの会社役員なのか、 もしくは場所柄と彼の前に置かれたテーブルの上に載った雑多な物を見るに通信販売のセールスマンなのか、 ともかくとして……彼を見たかがみの第一印象はそんな感じであった。 『本日はこのリニューアルを目前とした複合ショッピングビル・ブランシェで執り行われる最後の宴に参加していただき、 まずは進行役と執行責任者である私――黒崎義裕より感謝の意を表させていただきます』 黒崎義裕と名乗った男は穏やかに一礼。 慣れているのだろうとそう思わせる貫禄のある所作を見せると、ぽかんとしているかがみに構うことなく話を次へと進めた。 『まずはこれを見られている方々に注意を述べさせてもらいます。 この放送は一度きりで決して繰り返しはしません。 あなた方の命運に関わることですので、どうかお聞き逃がしの無い様ご注意ください』 命運――その言葉を聞いてかがみは心の中にある漠然とした不安が形を持ち始めたことを意識しだした。 視線はそのままに片手を首輪に、そしてもう片手に首輪から垂れ下がった名札を握り、男の次の言葉を待つ。 見ている者の緊張の糸を絞るためか、少し長めの間を置き――そして男は事の説明を開始した。 『混乱されている方がほとんどだと思いますが、それも無理はありません。 このイベントの参加者はこちらが勝手に選び、そして拉致という方法で強引に連れてきたのですから――』 それを謝罪しますと、モニターの中で男は再び一礼。 拉致――意味は知っているがしかし自身の近くには無かった言葉にかがみの身体は凍りつく。 そして男が続けた、警察に通報しても無駄だということ、我々にはそういった権力と実行力が存在するという言葉に 自分が非日常の中に――しかもそれは本棚をどんどん浸食してゆくラノベの中で見られるような愉快なものでなく、 限りなくリアルで、犯罪や誘拐、監禁や人身売買といった、そんなあるとは知ってても決して自分には縁が無いだろうと そう思っていたそんなものに――巻き込まれてしまったのだと、冷えた心の奥底でそう実感してしまっていた。 『皆様のことを最初に”挑戦者”と呼称させていただきましたが、その通りに皆様にはあるゲームに挑戦していただきます』 そして男はそのゲームの名前を明らかにした。 囚われの身となった人間達が持てる全てを総動員し、死力を尽くして挑まなければならない命を賭けたゲーム。その名は―― ――バトル・ロワイアル ◆ ◆ ◆ 決して暖房が効きすぎているわけというでもないのに、かがみはセーラー服の下にじっとりとした汗を浮かべた。 バトル・ロワイアル――その言葉に含まれるひどく嫌なものを感じ取り、緊張に身体を強張らせる。 『この企画の趣旨を簡潔に言い表しますと――つまりは、殺し合い』 思い浮かべた予感が即座に現実となってしまったことにかがみは眩暈にも似た絶望を覚えた。 現実であることを肯定する事実と、これが現実ではないと否定したい願望が綯い交ぜになり、酩酊感と吐き気を覚える。 これがただのドッキリ企画だとそう思いたい。そうであるだろうと思えられる材料を見つけたいと考えるものの、 しかしこんな時に限っていやに冷静な自分の一部分がそんな淡い願望を次々と打ち砕いていた。 そして一縷の希望を――これが嘘だという言葉を期待して、かがみはモニターを見続ける。 『我々が招待させていただいたあなた方30名により、殺し合いをしてもらうという企画です。 勿論、何もなければあなた達はそんな馬鹿げたことはしないでしょう。 ですが、あなた達は我々の言葉に従うしかない。なぜならば――』 と、そこで言葉を区切りモニターの中の男は脇に立てられていた一体のマネキンを指差す。 真白なマネキンに服は着せられておらず、装着されているのは首輪のみ。男の指先はその銀色の首輪へと向けられていた。 1秒か2秒か……空白の時間が過ぎ、そしてその次の瞬間。マネキンの喉元が渇いた音と共に――破裂した。 『御覧のとおり、皆様に嵌めさせていただいたこの首輪には爆薬が仕掛けられております。 決して派手なものではありませんが、爆発すれば致命傷は免れ得ません。 我々の意にそぐわない行動を取ればこれは爆発しあなたの命を奪うと、そうご理解ください』 未だ薄く煙をあげるモニターの中の首輪を見て、かがみは自身の首輪に触れていた手を恐る恐る離した。 爆薬が仕掛けられていると知ると途端にその存在感が増し、重さも息苦しさもそれまで以上に強く感じられる。 まるで、もう首と胴体が離れているような、首輪により断絶されているような、そんな錯覚さえしていた。 『では、改めまして……ルールの説明を行わさせていただきたいと思います』 ◆ ◆ ◆ 『まず、第一にあなた方参加者30名により殺し合いをしてもらう――この中に禁じ手はありません。 己の命を守るためにどの様な手段を用いようとも、我々はそれを非難したりルール違反だと断ずることはありませんのでご安心を。 またこのゲームの最中に行われた行為におきましては一切法律で罰せられることがないことを予めお伝えしておきます。 このゲームが終了した後、例え何人殺害していようともあなたが警察に捕まることはありません。 その点は我々を信頼して、憂い無くゲームに集中していただくことを望みます。 では肝心のゲームの決着方法についてですが……、 次の午前0時を終了の時間と設定し、その時までに最後の一人となっているというのが勝利条件となります。 勝利者は例外なく一人のみ。 時間が来ても決着がついてない場合は全員失格とし、ドローゲームとして全員の首輪を爆破させていただくことになります。 24時間は決して長い時間ではありません。悠長に事を構え、醜態を晒す事のないようご注意ください。 そして、勝利者への待遇ですが……、 まず第一にそれ以降の安全と法律よりの保護は勿論、我々より賞金十億円を進呈させていただきます。 これも決して冗談ではありませんのでご安心ください。 また金銭の受け渡し方法につきましても――……』 十億円――と、些か現実味に欠ける金額に思考が停止しているかがみの前で、男はその譲渡手段について説明を続けていた。 海外の銀行口座を用意できるだとか、貴金属や証券、土地、権利、どこかの役員としての報酬――etc.etc. 世間や警察に目をつけられないためのカモフラージュの方法が多岐にわたって存在すると。 まるで、ビジネスマン同士の取り引きに居合わせたかのような――そんな場違いな感を抱き、そして同時に 粛々とそれを語る男の姿に、彼らにしてもこれは決して冗談や遊びではないのだと――彼女はそんな印象を受けていた。 『次に、皆様方に嵌めていただいている首輪について説明いたします。 先程御覧いただけましたように、その首輪には爆薬が仕掛けられておりこちらは任意にそれを爆破することができます。 また首輪を無理に外そうとしたりビルの外に出ようとすると、それを感じ取った首輪が自動で爆発するのでご注意ください。 他に、後で述べさせていただきます”禁止エリア”に踏み込むことでも首輪は爆発します。 ただしその場合においては、爆破までに30秒の猶予時間が設けられていますのでその間に退出すれば問題はありません。 そして、これは首輪について最も重要なことですが……、 首輪からぶら下がっている名前の書かれたタグ。これを引っ張って抜くことでも首輪は爆発します。 この場合におきましても爆破までには30秒の猶予がございますので、即座に挿し直せば問題はありません』 言い終わると、男は説明したとおりのことを新しいマネキンと首輪で実演してみせた。 首輪の喉元の下からぶら下がったタグを引き抜き、電子音によるカウントダウンが始まることを見せてみると 鎖の先についたプラグを首輪の元の位置に刺してそれを止め、そしてもう一度抜いて30秒経つと爆発することを証明する。 かがみはそれを見て、自身の首輪からぶら下がったタグをそっとセーラー服の中当ての中に仕舞い込んだ。 『では先程申し上げました禁止エリアについてですが……、 まずこのゲームを行う舞台。それがどこからどこまでなのかを説明させていただきます。 このショッピングビル・ブランシェの1階より4階までの、原則的にお客様が立ち入れる場所のみを舞台とします。 故に、基本的に従業員用の通路やバックヤードその他諸々は利用できません。 ただし店舗等のレジカウンターの中や飲食店の厨房の中などは制限してない場合もあります。 舞台とそうでない場所の境界には”KEEP OUT”のテープが張られていますのでそれを見てご判断下さい。 またエレベータも稼動していますが、これも1階から4階までにしか止まらないので留意をお願いします。 改めまして禁止エリアについてですが……、 時間切れによるドローゲームができるだけ起きないよう、舞台を狭くするために ゲーム開始より6時間経つ度、1階より順に1フロアずつそこを立ち入り禁止とさせていただきます。 またその際に起きましては館内放送にてそれをお伝えしますのでお聞き逃しの無いようご注意ください。 加えて、放送ではその段階でのゲームの進捗。生き残り人数や脱落者の発表を行うことを予めお知らせしておきます』 淡々と進むそれにかがみは空恐ろしいものを感じていた。 ただ粛々と説明を続けるだけの男には、なんら狂気も荒ぶったところも感じられない。 それがただ怖かった。まるで常識の通じない異国に迷い込んだような、自らの中に頼るものの無い不安感があった。 『それでは、もうすでに確認しておられる方もいらっしゃるでしょうが、近くに黒いデイパックがあることをご確認ください。 ……ありましたでしょうか? それはこちらより参加者の皆様にお配りした、ゲームを進めるに当たっての最低限の物資です。 その中には私の目の前に並べられている物と同じ物が収められています。 まずは、このゲームの舞台となるブランシェの1階から4階までの見取り図。 御覧になっていただければ解ると思いますが、配布したものには店内の案内板には見られない印を打ってあります。 これは”タグ交換所”の場所を示しており、あなたが誰かから得たタグを数に応じた武器と交換できる場所となっております。 つまりはゲームに対し積極的であることが有利に働くという仕組みですので、ぜひご活用ください。 次に全参加者の名前を記した名簿とメモ、筆記用具一式。 ゲームの進行途中で誰が脱落して誰が残っているのかなど、いついかなる時も情報は軽視できません。 こちらはそれらを扱うためにご活用ください。 名簿を見て気付かれたでしょうが、ほとんどの方には友人や家族など心当たりのある名前が見られるでしょう。 即座に殺しあわれても構いませんが、そういった見知った相手と手を組む、といったことも我々は禁じてはいません。 時に利用し合い、時に裏切る――それも先に述べました情報と同じくゲームの駆け引きの一つです。 また、今生の別れとなるのが惜しいという相手もおられるでしょうし、取り敢えずは知った人間を探すというのも悪くないと 私個人から皆様方にそうアドバイスさせていただきます。 そして、こちら側で時刻を合わせた腕時計が入っております。 すでに時計を持っておられる方には不要かも知れませんが、 ゲームに使用する時間はその時計の時刻を基準としていますので、自前の時計とズレがないか一度ご確認ください。 ……最後に、このゲームにおいて最も重要な相手を殺すための武器が入っております。 ですが、これは今までの物と違い一人一人異なる物を用意させていただきました。 例えばナイフであったり拳銃であったり、はたまたライフルであったり……という訳です。 これは有利不利によりゲームの戦略性を増すための施しであり、ゲームが始まればそれを実感していただけると思います。 ライフルなど、中には大きさの問題で鞄の中ではなく外に出ている場合もございますが、 その場合でも鞄の近くに置かれているはずなので忘れていかぬようご注意ください。 では、以上を持ちましてバトル・ロワイアルの説明を終了とさせていただきます。 もうすでにゲームは開始されておりますので、無為無念の死を遂げぬようそれぞれ全力でお取り組みください』 そして、最初がそうであったように全てのモニターは唐突に光を失った。 ノイズを映すことも無く、まるでずっとそうであったかのように、今のが幻だったかのように画面は真黒のまま。 まだ画面を見上げたままのかがみをぽつんと残し、止まることのない流れが今静かに滑り出す。 バトル・ロワイアルが始まる。 next⇒
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蝉が鳴き始めて数週間 いまだに鳴り止む気配を見せないそれは、ここ数日ラストスパートの如く大音量で夏の空に響いていた 「暑いわね」 「暑いね」 ここは私の部屋 隣にいるかがみが無言で何かを訴えてくる だから私も無言で諦めて、と返す きっかけは簡単 エアコンが壊れた 今朝方まで稼働していたソレはかがみが来る20分程前に完全に沈黙 今さら場所を変更して勉強する気にもなれず 私達はそのまま予定通り勉強を開始 しかしこの暑いなか集中力が続くわけもなく、開始から一時間で早々休憩という訳だ 「暑いわね」 「暑いね」 すぐ近くにあるかがみの顔を見上げる かがみは私ではなく窓の外、その瞳の色と同じ青い空を見ていた いつも見ているはずの横顔なのに その時私は何故だか 本当に何でだかわからないけど この夏が過ぎたら、この暑さが消えたら かがみまでいなくなってしまう気がして、怖くなった そんななか、グッと右手に圧力がかかる いつの間にかかがみはこちらを見ていた その顔は心配そうで、それでいて力強い笑顔 先程までの不安が嘘かのように思えた つられるように私も笑い返す 私は改めて、この人を選んで本当に良かったなと思った 「暑いね」 「そうね」 だから私は繋がっている右手に力を込める 今年も夏は過ぎていく 暑さもいずれは引いていく それでもこの手は離さないと それでもこの人は離さないと 澄んだ夏の空の下 私は誰に誓うでもなく 自分自身にそう誓った コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-05-22 02 27 27) 完全に沈黙…で吹いてしまったw -- 名無しさん (2009-11-26 08 41 01)
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──シャボン玉とんだ 屋根までとんだ── ──屋根までとんで、壊れて消えた── ねぇ、かがみ。 「何?」 この歌ってさ、ちょっと残酷じゃない? 「アンタはまた、屋根“までもが”とんだ、とかいうんじゃないでしょうね」 違うよ。自分が楽しんで、一生懸命作った物がものの数秒で、消えちゃうんだよ。 夢は儚い。私にはそう詠っているように聞こえちゃうな。 「…………」 ~シャボン玉~ 「ごめんくださぁい」 舌足らずな、小学生のような声が聞こえた。 こんな声を出して、なおかつ家にやって来るのはアイツしかいない。 「おーす。早かったわね」 泉こなた。私の親友、だ。 「いやぁ。かがみんに早く会いたくなっちゃって」 「な、何言ってんのよ!」 こなたの顔がニヤニヤと私を見ていた。 「あれあれ~。もしかしてかがみん、ドキッてしちゃった?」 うぅぅ。ドキドキするに決まっている。だって目の前で、大好きな、だけど親友のこなたがこんなにも嬉しいことを言ってくれているのだ。 「冗談はこの辺にして、つかさ居る?」 一気に、熱が冷めてしまった。 「……縁側に居るわよ」 ああ、自分でも嫌になる。こんなにも態度に出てしまうなんて。 勿論、つかさのことが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。でも私の好きな人の口から紡がれる、その三文字に嫉妬してしまう。 つかさが居なければ。そんなことを思ってしまう自分が恐ろしく、怨めしかった。 「そっか。いや、借してた漫画、また読みたくなっちゃってさ」 「そ、そうなんだ」 無理矢理、笑う。きっと、酷い顔をしているんだろうな。 だけど、こなたは造っているようには見えない、綺麗な顔で、笑うんだ。 「そうだ。読み終わったらかがみにも貸してあげるよ」 「私に理解できる内容ならね」 「その辺は大丈夫。つかさぐらいの一般人でも楽しめる仕様だよ」 そう言ってこなたはスタスタと廊下を歩いていった。縁側へ向かっているのだろう。 もうこの家のほとんどが、こなたにとって勝手知ったる場所なのだ。 遠くで、こんにちは。こなちゃん、と聞こえた気がした。 近くで、ギリ、と歯同士が擦れ合う音が聞こえた気がした。 つかさは、シャボン玉で遊んでいた。 年齢を考えれば若干クエスチョンマークが浮かんでしまうのだが、つかさだと違和感がないのはどうしてだろう。 近所でシャボン玉で遊んでいる子供を見て、自分もやりたくなったんだそうだ。つかさらしいな。 ついでに、シャボン液が安売りしていて、十個も買ってきたらしい。正直、そんなにあってどうするんだ。 でも、今つかさはこなたと何を話しているんだろう。つかさはこなの事を、どう思っているのだろう。 そして……こなたはつかさの事を、どう思っているのだろう。そんな事を考えてしまう。 手が、震える。そうであればどんなに良かったか。 結局震えているのは私の心だけで、手など全く震えていない。 私のこなたを想う気持ちは、この程度なのだと、自己嫌悪する。 眩暈がする。立っているのが辛くなり、冷蔵庫にもたれる格好になってしまった。 やけに、肌に冷たさを感じる。それとも、自分が熱いのだろうか。 はたと、思い出した。三人分のジュースを持っていこうとしていたんだった。 「そうそう、くさいんだよ」 「クサイよね」 こなたも、シャボン玉で遊んでいた。 「ジュース持ってきたわよ」 「でかした、かがみ!」 こなたが勢い良くお盆からコップをひったくった。 「有り難う、お姉ちゃん」 つかさは苦笑するようにして、こなたの隣に座った。 私もそう自然に振舞えたらいいのに。そう、理不尽な嫉妬を覚える。 「そだ、かがみもシャボン玉やろうよ」 「え、あ、な、何言ってんのよ!」 出来るはずがない。だって、そのプラスチックのストローは、一本しか、ないのだ。 それは必然的に、私とこなたの間接キスを意味する。 ──同時に私は気付いてしまった。つかさとは、したんだな。 「もしかしてかがみ。間接キスとか意識してるのかにゃぁ?」 「そんなわけ──」 ないじゃない。と立ち上がって抗議しようとしたが、最後まで台詞を言えなかった。 ゆっくりと、私の視界はブラックアウトした。 パタパタパタと、団扇が頭上で扇がれていた。 「かがみ? 気がついたの?」 「あ……うん」 思わず、しり込みする。 状況が掴めなかったのもそうだけど、こなたの顔がとても近かったからだ。 「かがみ、覚えてる? 倒れたんだよ」 びっくりしたんだから。熱もあったし。そう、こなたが続けた。 そっか。私、倒れたんだ。眩暈がするなぁとか思ったら……風邪でもひいたかな。 「──シャボン玉とんだ 屋根までとんだ。屋根までとんで、壊れて消えた──」 突然、こたが歌い出した。 「ねぇ、かがみ」 何? 「この歌ってさ、ちょっと残酷じゃない?」 アンタはまた、屋根“までもが”とんだ、とかいうんじゃないでしょうね。 「違うよ。自分が楽しんで、一生懸命作った物がものの数秒で、消えちゃうんだよ。夢は儚い。 私にはそう詠っているように聞こえちゃうな」 …………。 「何でかな。もしかしたら、お母さんの事があるからなのかもしれないけど、私は昔から“永遠”に憧れてるんだ」 こなたの目が、遠くを見ているのは、お母さんの事を思い出しているからなのだろうか。 「だけどね、半分諦めてる。永遠なんて、ただの幻なんだって。かがみや……つかさや、みゆきさんと 永遠に笑って暮らすなんて、不可能なんだって」 どうして、気がつかなかったんだろう。この子は見た目どおり、こんなにも脆く、儚いのだと。 いつも明るく振舞っていたから? 違う。そんなのはただの言い訳だ。私が自分の責から逃れようとしているだけ。 それに、そう。今するべきことは、過去を悔やむことじゃなく、今を後悔しないように行動することだ。 「ちょっと待ってて!」 「え、ちょ、かがみ」 こなたの制止を振り切り、私は台所へ走った。 コイツは酷い勘違いをしている。それを私が正さなきゃいけない。否、私が、正したい。 どこにしまってあっただろうか。上の戸棚に──あった。後は、ベランダだ。 「こなた!」 「あ、何処行ったのか、心配したよ。てか、何持ってるの? たらいと、ハンガー?」 そう、私の両手には、たらいと、変形させて円を描くハンガーが大小二つ、握られていた。 つかさの買って来た、ありったけのシャボン液をたらいにぶちまける。 「何、してるの?」 私はこなたの質問に答えず、たらいに広がるシャボン液に、小さい方のハンガーをつけた。 そして、シャボン玉をつくる。 「…………?」 間髪いれずに、大きい方のハンガーにシャボン液をつけて、大きなシャボン玉を、つくる。 「あ」 二つのシャボン玉は、割れてしまう。失敗だ。 もう一度。もう一度、もう一度、もう一度……。 「ねえ、かがみ。何してるの?」 こなたがそう言った時だった。 「出来た!」 二つのシャボン玉が、片方を包含して、浮いていた。 それらは、運命共同体。どちらかが失われるとき、もう一方も消えてしまう。 そして、数秒を待たずして、壊れて……消えた。 「こなた、やっぱり“永遠”なんてない。私はそう思う」 こなたは俯き、それでもその足でしっかりと立って、私の次の言葉に耳を傾けている。 「だけど、今、一緒に居ることが出来る。大切なのは今、どうするかなんだよ。明日どうなっているか、 一年先にどうなのか。そんな事を心配していたらキリがない。だから、今を精一杯良い方向に生きるんだ」 こなたの頭が少しだけ、動く。 「今の二つのシャボン玉のように、私がこなたを包んで、二人で一緒に、いよう。今を二人で」 「かが、み……」 こなたの頬には、いつの間にか涙が流れていた。 私も、泣いていた。 ──ねぇ。かがみ── ──何?── ──私、かがみの事が、好き……です── ──私もだよ、こなた── コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-18 11 19 48) ☆☆☆☆☆ -- 名無しさん (2010-08-12 07 48 58) 最後ぐっときました -- マイケル (2009-08-17 02 53 54)